J-POP系ヒップホップアーティストの歴史【2000~2010年・後編】

前回の前編に比べると日本語ラップの低迷期に入るので、セールス的にもガクッと落ち、思いっきりJ-POPに寄せてしまったアーティストが多数存在したため、よりJ-POPとヒップホップの区切りが曖昧になってきたのも後編の特徴かと感じる。このアーティストは完全にJ-POPだろ。という批判的な意見も持ちながらご覧ください。

2006年

エイジアエンジニア

オリコン最高位 シングル17位 アルバム14位

2005年デビュー。MCのYOPPY、KZ、ZRO、SHUHEIからなるヒップホップグループである。

ヒットの時期は明確ではないが有線チャートで1位を記録した「純夏」、配信でゴールド認定された「1人のメリークリスマス」が2006年リリースのため、ここで着地。2005年にはワンピースの主題歌に起用、その後「orion」のスマッシュヒット、北京オリンピックの時期には「絶対負けない」がCMに使用されるなど、多少話題にはなったが目立ったヒットには至らなかった。

ポジティブ工房スマイル職人をモットーに明るい楽曲が持ち味だったが、切ないラブソングも多かった印象。主にMCのSHUHEIがサビのメインボーカルをしていたため、歌モノが多くJ-POPと捉えられがちだが、楽曲にはしっかりラップは存在し、B-BOY PARKに謎出演し、ディスられてしまったりなどヒップホップ要素もないことはなかった。

2013年に活動休止を宣言。2020年に活動を再開を発表したが、公開されているのは1曲のみで、メンバーは音楽学校講師、レーベルの代表取締役等、忙しいようである。

 

2007年

【ET-KING】

オリコン最高位 シングル10位 アルバム4位

2006年デビュー。当時のメンバーは7人。5MC+1DJ+1総合司会という謎編成のグループであった。

2007年リリースのシングル「愛しい人へ」が有線から火が付き、ブレイク。初のオリコン10、Mステ出演、デジタルダウンロードは100万件を超えるヒット。その年に発売したシングル「ギフト」もヒットし、日本有線大賞で有線音楽賞を受賞。アルバム「LOVE&SOUL」もオリコン4位を記録し、飛躍の年になった。その後も「新恋愛」など着うたダウンロードなどではヒットを飛ばすが、シングルCD売り上げに関しては20位以内に入るのがやっとであった。

ヒップホップを基調としたトラックに、レゲエサウンドや演歌、歌謡曲の要素を取り入れたオリジナリティが魅力。法被を着て裸足で大阪弁で歌う男7人組は異色の存在であった。CDショップのコーナーでもヒップホップという分類をされたり、レゲエ、J-POPに分類されたりなどCDショップも扱いがわからなかったようであるが、ヒップホップグループとメディアでは紹介されることが多い。

2014年に活動休止直後、中心メンバーの1人であるTENNが死去。2015年に活動再開をするも、2018年にはリーダーであるイトキンが死去。また、2022年にはボーカルのBUCCIが脱退したため、現在は4人で活動を行っている。

 

2007年

SoulJa

オリコン最高位 シングル6位 アルバム9位

2007年メジャーデビューのラッパー。

その年、青山テルマを客演に迎えた「ここにいるよ」でオリコンチャート6位を記録し、デジタルダウンロードは200万を超えるヒットを記録し、着うたブームの火付け役とも言われている。その後、青山テルマによるアンサーソング「そばにいるね」でフューチャリングで参加し、2008年の上半期最高の売り上げを記録し、「日本で最も売れた着うたフル楽曲」としてギネス認定され、その年の紅白歌合戦にも出場。そして2010年、コラボレーションシングルの最終作「はなさないでよ」がリリースされるもこちらはオリコン61位と振るわなかった。

ベルギーとのハーフで、アメリカにも住んでいたことがあり、英語が堪能である。ジャマイカのレゲエアーティストスライ&ロビーから「そばにいるね」のカバー依頼により、彼が新たに英語詞を起こしてラッパーとして参加した「ハリー・ホーム」が、彼らのアルバム「AMAZING」に収録された。同アルバムは同年のグラミー賞最優秀レゲエアルバム部門にノミネートされるなど実力を発揮。

また、青山テルマとの共演は友人を介して知り合い、カラオケでテルマの歌声を気に入ったSouljaが共演を依頼したという話だが、真相は明らかにされていない。

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2008年

Spontania

オリコン最高位 シングル7位 アルバム10位

Massattack、Tarantulaによる2人組ユニット。2004年、Hi-Timezとしてメジャーデビューも解散し、2007年、Spontaniaとして再デビュー。

2008年、JUJUをフューチャリングしたシングル「君のすべてにfeat.JUJU」がヒット。オリコン7位、累計は300万ダウンロードを記録。JUJUのブレイクのきっかけにもなった。その後、JUJUによるアンサーソング「素直になれたら」にフューチャリングで参加しそちらもヒットし、青山テルマ現象となった。その年に発売したアルバムもトップ10入り。その後も伊藤由奈をフューチャリングした「今でもずっと」が着うたでヒットしたが、「君のすべてに」を超えるヒットとはいかなかった。

こちらのグループもJ-POP表記だったり、ヒップホップグループと紹介されていたり紛らわしいが、ラップをしていた点、JUJUをブレイクさせた点で評価したい。Spontaniaは着うたラップ系コラボ界隈では名の知れた存在であるため、今回紹介しておく。

2010年女性ボーカリストのKaoriが加入したが、2011年のリリースを最後に目立ったユニット活動はしていない。

【CLIFF EDGE】

オリコン最高位 シングル18位 アルバム14位

2008年メジャーデビューではあるが、2007年、MAY’S、SHIKATA、KGらと共に、結成したユニットNATURAL8の1stアルバム「GOLDEN SHUFFLE」、同年、リリースしたMAY’Sとのスプリットミニアルバム「Dear…」においてもスマッシュヒットを記録。メジャーデビュー前にして、自身の作品と関連作の総累計出荷が10万枚を突破するという快挙を成し遂げるなど、コラボレーション界隈?ではかなり知られた存在であった。

メジャーデビューアルバム「to You」をリリースし、オリコン14位にランクイン。同年、ドラマ&全国東宝系映画「ホームレス中学生」の主題歌で、天上智喜とのコラボレーションシングル「Here」をリリース。2009年にはシンガー・詩音を迎え「ナミダボシ feat. 詩音」をリリースし、着うた、着うたフルが30万DLを突破し、スマッシュヒットを記録した。

こちらのグループもJ-POP表記だったり、ヒップホップグループと紹介されていたり紛らわしいが、一応ラップをしていた点、Spontania同様、着うたラップ系コラボ界隈では名の知れた存在であるため、今回紹介しておく。

2014年、レコード会社移籍を機にカタカナ表記に改名し、活動を続けているが、2016年を最後に目立ったリリース活動はしていない。

SOFFet

オリコン最高位 シングル7位 アルバム10位

2003年デビュー。GooFとYoYoによる2人組ユニット。

2003年リリースのシングル「人生一度」がロングヒットを記録。2008年、mihimaru GTとのコラボレーションシングルで初のオリコントップ10入りを果たす。同年リリースのベストアルバムも10位に入っているためここで着地。また、高須クリニックのCMソングを歌っていることでも知られる。

このグループをヒップホップと捉えるのはどうかと思うが、ラップユニットとして紹介されているメディアもあり、またこちらで取り上げたアーティストと同じくくりで語られることが多いため、こちらで紹介。ギターなどのシンプルなトラックにメッセージ性の強いポエトリー要素が入ったラップは唯一無二の存在であった。彼らは自分たちはヒップホップという枠組みかもしれないが、そんなつもりはなく、聴く人による。とにかく楽しく聴いてくれればいいと語っている。

2017年に活動休止。現在はソロで活動を行っている。

 

Lil’B

オリコン最高位 シングル8位 アルバム2位

2008年デビュー。ボーカルMIEとラッパーAILAによる女性ユニット。

2008年、【キミうた3部作】として連続リリースした“キミ”をキーワードに制作した3つのラブソング「キミに歌ったラブソング」「願いごと一つキミへ」「キミが好きで」が、いずれも着うたランキングで初登場1位を獲得し、累計で300万ダウンロードを突破するヒットを記録。翌年リリースしたこの3曲を収録したアルバムはオリコン2位を獲得。当時の女子中高生から絶大な支持を集めた。

このグループをここに入れることは迷ったが筆者の思い出補正という事で紹介。(笑)ラッパーがいて比較的まともにラップをしているがこれはJ-POPである(笑)上記のクリフエッジもそうだが当時はこのどこから出てきたかわからない着うた系ユニットが流行った時代であった。

2011年、ラッパーのAILAが脱退。それ以降はボーカルMIEのソロプロジェクトとなったが、事実上の活動休止状態とみられる。

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2009年

【ONE☆DRAFT】

オリコン最高位 シングル14位 アルバム12位

2007年デビュー。MCのLANCE、ボーカルのRYO、DJのMAKKIによる3人組ユニット。

全員が帝京高校特待生の野球部出身という異色の経歴でも注目を集めた。2009年にリリースされたシングル「アイヲクダサイ」がロングヒットし、オリコン14位、配信では累計60万ダウンロードを記録。その後も巨人戦野球中継のテーマソングの「情熱」や、アニメ銀魂の主題歌である「ワンダフルデイズ」が話題になるも、「アイヲクダサイ」を超えるヒットには至らなかった。

ラッパー、シンガー、DJという役割でドラフト1位になるという意味を込めてONE☆DRAFTと名付けられた。MCのLANCEはラップのスキルこそあったものの、サビを担当することも多く、歌うことが多くなってしまい最終的にはJ-POPに寄ってしまう結果となった。ラブソングが多いが、自身が野球部出身という事もあり熱い応援ソングも存在し、多くの共感を呼んだ。

2020年、ボーカルのRYOが脱退し、2人体制となったが目立ったリリースはしておらず、事実上の活動休止状態である。

 

Hilcrhyme

オリコン最高位 シングル6位 アルバム2位

2009年デビュー。MCのTOCとDJのDJ KATSUによるユニット。

2009年リリースの「春夏秋冬」が有線を中心に人気に火が付きブレイク。オリコンは最高位6位ながら年間チャートも53位と異例のロングヒット。着うたもミリオンを突破。その翌年に発売されたアルバムでオリコン2位。シングル「大丈夫」が日本有線大賞にノミネート、「ルーズリーフ」はドラマの主題歌に起用されるなど着実ににヒットを飛ばし、2014年には武道館でのライブも開催。

「春夏秋冬」がヒットした2009年当時、ヒップホップでは久しぶりのヒット曲といえるヒットであり、多くの注目を集めたが、完全に歌モノだったため、セルアウトだという意見や、KREVAの歌声に似ているなどの批判もあり賛否を呼んだ。しかし、その確かなラップスキルと、サビのキャッチーなメロディで多くのファン層を獲得し、現在も確固たる地位を築いている。

2017年、DJ KATSUが大麻取締法違反で逮捕、これによりHilcrhymeを脱退。現在はTOCによるソロプロジェクトである。

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感想(1件)

いかがでしたでしょうか。

この時代は日本語ラップの低迷期に突入したと言われる時代です。冒頭でも触れましたが、時代の流れでヒップホップ系のアーティストはJ-POPに寄せていくグループが増えました。また途中からは一般層からの認識は着うたブームでラッパーはフューチャリングで参加する人程度の認識だったのかもしれません。2009年HOME MADE 家族が日本武道館でライブをした後、2014年AK-69がライブをするまで武道館で初めてライブできるラッパーは一人もいなかったのも事実です。今でこそ受け入れられるようになったものの、当時はバンド、アイドルブームで筆者は学校で肩身の狭い思いをしました。(笑)

2022年はAwichが初めて武道館公演を行いました。次は誰が武道館でライブができるのか、非常に楽しみな時代になりました。

 

自己満足ですが、図を作ってみました(笑)

※図は2022年現在です。

 

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